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私の住む街は東北の田舎で、私は子供の頃からこの街がイヤでイヤで仕方がありませんでした。
なぜそんなに嫌いだったのかと改めて聞かれても、はっきりとは答えられないのですが、とにかく目に映る景色や街の様子、家族を含めた人々が嫌いで、「いつかは絶対にこの街を出てやる」と思っていました。
経済的に無理を承知で大学へ進学し、外へ出る足がかりを作った私は、街を出て家を離れた嬉しさに少々浮かれて、大学では遊んでしまい、1年多く通う結果になってしまいました。
それでも親は嫌な顔をせず、学資と仕送りを続けてくれました。
卒業して家に帰った時、家は新築されていました。それは大儲けをしたわけではなく、失火により家を全焼し、山を売ったお金で新築したのでした。私は何にも知りませんでした。
私の妻が初めて私の実家を訪れたとき、この街を「とても良い街」だと言っていました。何が良いのか尋ねてみると、「まず目に飛び込んでくる風景が素敵」だといいました。
彼女が乗って来た列車の窓からはず〜っと山しか見えなかったそうです。そして間もなく私の街に着くという時に、いきなり窓から見える景色が変わったといいます。
今まで山しか見えていなかったのが、ず〜っと広がる海が飛び込んできたのだそうです。それがとても印象的だったらしいです。
私の住む街は、後ろは山、前は海で、両端を峠で囲まれた、昔から半農半漁の暮らしぶりの街でした。
そこに暮らす人々は、生活の苦しさに耐え、家族・親族が互いに手を取り合って、協力し合って生活している街です。
大きな変化はないけれど、穏やかに時が流れ、慎ましくはあっても安心して暮らせる街なんだと、彼女に教えられました。
今は、私はこの街を出て、いったいどんな街に住みたがっていたのだろうと思います。


